
和辻哲郎には、独特の困難がある。それは様々な意味で文章が上手すぎるという困難である。それゆえに言いくるめられてしまった挙げ句に、この人物の理論的、哲学的な「手の内」が見えてこないということが起こりうる。和辻の手の内をぜひとものぞき見したい。そんな意図がこの本の出発点である。小文「私の根本の考」『人間の学としての倫理学』を素材として、そこで展開される「社会学」を子細に検討していきながら、この思想家の思考が社会学理論においてどのように展開しうるのかを考えていく
目次
Ⅰ 間(あいだ)の思想と社会学――和辻哲郎「私の根本の考」をめぐって――
1:一つの思考様式の系譜
2:哲学のスキャンダル?
3:社会学と間の思想
4:倫理学と社会学の間
5:間の思想と相互作用
6:間の思想からのさらなる展開
7:結論とさらなる課題;和辻哲郎をめぐる相互作用
Ⅱ 人間(じんかん)の学としての社会学――社会理論と和辻哲郎『人間の学としての倫理学』――
1:循環論法という方法
2:人間という概念
3:一九三〇年代に追いつくために
4:分岐点としての和辻倫理学
5:倫理と社会の間
6:弁証法という修辞法
7:社会の修辞法(レトリック)
8:倫理を作り出す
9:思想を語る方法
10:自己言及する人間
11:循環する社会
12:解釈学的社会
13:自己言及社会から